櫻井よしみさん

《後編をアップしました》
人生における大切なもの。それは“愛”と“お金”である。「はぁ?愛なんて金でどうにでもなるでしょ?」。そうかもしれない。もしも売っているお店があるのなら。「お金なんて!愛さえあれば、あたしは生きて行けます!!」。うん、それは素敵だ。愛を食べて生きていければだけど。この二つは、目的と手段の関係ですらない。愛を手にするためにお金があるわけでも、愛がお金を生むわけでもない。お金で愛を買えないのと全く同じように、愛で食べ物を買ったり、光熱費を支払ったりもできない。当たり前過ぎて忘れがちだが、お金買えるものは“お金でしか”買えないものだったりする。“愛と“お金”どっちが大事?というのはナンセンス。“どっちも大事”としか言いようがない。恋愛、結婚…人生というたった一度の晴れ舞台を、素晴らしいものとして歩いていくために、大事なものは大事と、若者も、いい年こいた大人たちも、皆さんここらで指差し確認しておくのもよいのでは。(文責:吉田直人)

「どんなときも家庭が中心!」

天気のよい日には、彼方に東京タワーを望むこともできる高台に建つマンションの一室。北欧の家庭を思わせるダイニングテーブルの上にはおいしそうな料理が湯気をあげている。櫻井よしみさんは、普段は派遣社員として会社に勤めながら、週末に自宅で食育や美容に関する講習や、ちょっとした料理教室を開いたりしている。体に優しく誰でも作れる簡単なレシピ。初対面同士でも仲良くなれるアットホームな雰囲気で、友達からその知り合いへと、その輪は広がっていく。

“結婚をすると自由がなくなる”と、イメージしている独身者は、アクティブで自由な櫻井さんに驚く。週末、興味のあるセミナーがあれば聴きに行き、人を招いて教室を開く。本人は「不良妻だよね」と言って笑うが、「どんなときも家庭が中心!」の彼女は、家事や家族のことを疎かにすることはない。

“彼”がすべてだった

「たぶん、結婚して変わったのは夫のほうだと思う。“お付き合い”から“家庭を持つ”になると男の人の気持ちって変化していくんじゃないかな」。

“3年一緒に住んだら結婚しよう”つき合い始めたときに、現在の旦那さんと決めたことだった。一緒に暮らし始めてからは7年になる。櫻井さんにとっては、結婚よりも、同棲を始めたことが大きな変化だったいう。

「最初の一年目、私はとにかく“彼中心の世界”だった。仕事も、ほかのことも、すべて“彼”という土台ありきだった」。櫻井さんは一つのことに集中するタイプで、恋愛にも通じていた。いつも彼においしものを食べさせてあげたいなぁとか考えていて過ごす日々。「よく言えば“できた彼女”だけど、悪く言えば恋人に対する依存度が高すぎた」。すべての道は“恋人”に通じるといった具合だろうか。一直線の恋は幸福だ。だが、同時に危うくもある。

「人を好きになる幸せは人一倍感じることができて、若いころはそれでよかったって思うけれど、いいことってひっくり返ると大変。何かあると相手のせいにしてしまうから」と振り返る。長く一緒に過ごしていれば、いろいろな時期がある。登り坂、下り坂、まさか!“彼色に染まっていた”ときには生活のことなど気にしていなかった。愛を食べて生きていけるから。それが三年目あたりになり結婚を意識し始めると、少し現実を見つめたりもするのか、二人の意見が合わなかったり、苦しいときもあった。

理想の夫婦は“愛”の賜物

休日にはセミナーへ出掛けたり、家に人を呼んだりしている妻に旦那さんは文句を言うどころか、ときには夫婦で櫻井さん友達の集まりに参加し、一緒に遊んだりもしている。趣味の自転車で夫婦そろって帰っていく姿は、自然で仲睦まじく、理想の夫婦の印象を受ける。

愛、それは相手を思いやること。現在櫻井さんがアクティブでいられるのは、きっと旦那さんの“愛”があってのことだろう。

思い続けることは叶う!?

そんな旦那さんも、最初は協力的ではなかった。以前は、自宅で料理の集まりをしていても、妻の友達が遊びにきていても、旦那さんは自分の部屋にいて出てこないことが多かったという。変化にはどんなきっかけだがあったのか。

「夫がなりたい自分を見つけて変わった」。ご主人が肉体改造をしようと、身体や健康のことに関心を持ち始めたことが最初のきっかけだった。櫻井さんが行っている美容や健康の話に耳を傾けるようになり、その流れで集まりにも参加するようになっていったのだ。「でも、私はつき合い始めたときから、“いつか(夫)が友達と一緒に遊んだりするようになる”って思いつづけていたから。思い続けていることは叶うって思うんです」。愛、それは信じること。信じ続けること。そう、病めるときも、健やかなるときも。

どんなきっかけで物事が好転するかはわからない。妻が夫を信じ、思い続ける愛、夫が妻のやりたいことを尊重し、思いやる愛。それらが重なり合うとき“思い”は“叶う”のかもしれない。

ところが“思い続ける”ても、ときにどうにもならない問題もある。“愛”とは交換不可能ゆえに、愛があったとしても困るときは困る。人生におけるもう一つの大切なもの。そう、“お金”である。

櫻井よしみさん
貧乏でも“ラブラブ”それでも現実は厳しい

つき合い出した当初、旦那さんは転職活動中で、無職だった。年齢的にも次の就職は慎重に考えている時期だったのだ。しばらくの間は生活が苦しかったが、二人は幸せだった。「貧乏でもラブラブだから全く気にならなかった。私は自分が女として生きて行くヴィジョンができていたから」。櫻井さんは言う「将来のヴィジョンが決まったら、今を犠牲にできるタイプだから」。

とはいえ、いくらラブラブでも、“あなたさえいてくれたらお金なんていらない”状態だとしても、生活のためにつきまとうのが“お金”という名のカッチカチの現実。20万円の収入の半分以上は家賃で消える暮らしの中で櫻井さんは交際費がかかるから友達を作らないようにしていた。

コンビニにテレアポ、パワフルに突破!

朝はコンビニでアルバイトをして、昼からテレアポの仕事へ出勤。「若かったから、今はたぶん無理!」櫻井さんは“働きマン”時代だ。仕事に対して、鋼のごとき強靭な根性を持っている、桜井さん。しかし、それゆえに、痛い思いをしてしまったこともある。

櫻井さんは高校卒業後から働いているので社会人歴は長い。さらに高校時代にはスーパーのレジ打ちのバイトもしていたため、二十代前半のころには年齢にしてはかなりの金額の貯金があった。 ところが、その頃勤めた英会話の会社は恐ろしいほどの完全な歩合制。どれほど仕事に熱中しても、給料が出ない暮らしが続いた。それでも彼女はその仕事が、とても好きだった。家族や友人たちの反対、説得も受け入れず、ついには貯金をすべてなくすまで働き続けてしまった。「でも、あのときお金がなくなってよかったのかも」と振り返る。「あれがなかったら、今でも(お金がなくても)なんとかなるって思っていたと思う。でも、今はあの経験から、何とかならなかったことを知っているから」。そしてこう続けた。

「お金がなくても生きてはいけると思うんです。頑張れば。でも、“自分らしく”生きていくことはできない」。

“マイナスの輪廻”からの脱出の仕方

そんな時期に購入したのが、今回座右の品にもあげている「多重構造鍋」だった。その値段(一式そろえて)17万円というのだから、お金がないときには大きな決断だ。

「マイナスなときって、選択肢も一つだけになっているんです。マイナスゆえにマイナスを選択するしかなく、同じマイナスの歯車の中をぐるぐる回っているような「マイナスの輪廻」だと思うんですね。そういうときは、その“歯車自体”を変える必要があるんです。踏ん切りをつけなくてはいけない」“。マイナスの輪廻”は時間とともに解決されると思っている人もいるが、彼女は断言する。「それではマイナスの輪廻は断ち切れない」。

わかりにくい読者は、“モテ”に置き換えて考えてみれば理解しやすい。モテないときには、モテないがゆえに不安になり、余裕がなくなって、どう考えてもうまくいかないような行動を選択してしまうものだ。「モテない」→「余裕がなくなる」→「がっついた雰囲気」→「モテない」(これを“非モテの輪廻”という。反意語:“モテスパイラル”)ようは、根本的な転換なしに、小手先でちょろちょろしたってだめだということだ。

“高い鍋を買ったから人生が好転した”ということではない。 たまたま彼女の場合に鍋だっただけで、重要なのは、マイナスの輪廻を断ち切るような“決断”をしたということだ。

「例えば何かやりたいことができたときとか、病気や怪我で仕事ができなくなったときとか、人生で、何かを選択する場面で、選択肢の幅を決めているのはお金だったりするから」。櫻井さんは現在、会社員としての仕事ほかに複業をこなし、自分が実現したいライフスタイルのために“働きマン”のセカンドステージを走っている。

「“副”ではなく“複”という意識」得られたものはお金だけではない。自分の好きな料理や美容を扱い活動していく中で、同じようにそれらに関心のある人と出会い、つながっていく。かつて狭まっていた人間関係は再び広がっていったのだ。

“自分らしく”生きていくために

櫻井さんにとって“ふつう”とは、自分らしく生きること。

「自分らしくっていうのは、“大切なもの”“大切な人”を大切にできること」だから仕事が忙しくて家で食事ができないとかが一番のストレスだと言う。「バランスよく生きたいから。これをやるから、これをやめるとかしたくない」。なかなか欲張りだ。

“何かを手に入れるためには、何かを我慢しなければいけない”。子供のころから刷り込みのように教えられているこの言葉は、有限な人生に対してある種、正しい言葉だろう。だが、もしかしたら、本当にほしいものを手に入れる者とは彼女のように何も犠牲にするまい、と決めている人間なのかもしれない。「これからも、いろいろありそうだけど、やるしかない!それを楽しむぐらいがいいのかもしれない」と笑顔でしめくくってくれた。

先日、給料日前のひとときに筆者は、銀行の残高が170円代になっていた。結婚できるだろうか。

「お前は金の前にまず“愛”もないだろう!」という指摘を受ける前に、歯車を交換するような“抜本的な政策の転換”が迫られているのかもしれない。

座右の品
ステンレス製の多重構造鍋

どんな人でも、すべての人が笑顔になれる瞬間は、おいしいものを食べているときだから。

【略歴】

1982年2月1日生 東京都あきる野市出身/神奈川県横浜市在住 秋川市立草花小→あきる野市立御堂中→都立昭和高→美容室受付→某英会話会社→広告代理店→派遣社員として勤務、24歳のときに結婚【血液型】A型【星座】みずがめ座【家族構成】夫と自分【趣味】料理とケーキ作り【お気に入りスポット】みなとみらい【好きな食べ物】チーズ【嫌いな食べ物】ないけれど、しいていえばわさび漬け【好きなタイプ】誠実な人【座右の銘】「優しい人は、強い人」【子供のころの夢】漫画家

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2010-07-15-THU






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