「人の体」を通して、心もケアしていきたいプ女子

インストラクター 葛西むつ美さん

「ピラティス」という言葉をご存じだろうか。ヨガと同じように女性の間で人気があるエクササイズのことで、筋力・バランス強化に加え体幹やインナーマッスルを鍛えることができる。そんなピラティスのインストラクターとして活躍しているのが、葛西むつ美さん(36)。スポーツイントラクターとして勤めていた会社を10年前に退職。フリーランスとして独立してから試行錯誤した8年間。そしてピラティス1本で食べていけるようになってから4年が経った今、彼女はどのような気持ちで仕事、そして生徒と向き合っているのだろうか。(文責:小野ヒデコ)

体を動かすことが何よりも好き

葛西さんは20歳の時、総合格闘技と出会い、格闘技を始めた。きっかけは2000年の「PRIDE GP 2000」で、桜庭和志vsホイス・グレイシーの試合を観たことだ。試合の演出と内容に魅了された。当時、フリーターだった葛西さんは心のどこかで何かに熱くなるようなものを求めていたのかもしれない。

「高校1年の時、バレーボールが好きでバレー部に入部したんですが人間関係が上手くいかずすぐやめてしまって……」

という過去が心に引っかかってもいた。その時の煮え切らない思いが、格闘技を始める後押しになったのかもしれない。

元々、体を動かすことが好きだったこともあり、格闘技にのめり込んでいった葛西さん。その後、「運動する楽しみを人に伝えたい」と考えるようになり、24歳の時スポーツクラブの社員として働き始める。しかし徐々にフリーで働いている同僚に魅力を感じるようになっていった。

「会社員は安定しているのですが、一方で管理業務や人材育成などの業務に時間を取られてしまいます。フリーだと専門性を高められるし、純粋に教えることに集中できるので興味をもつようになって」

そして、2004年に勤めていたスポーツクラブを辞め、フリーのインストラクターになる。

人の体を扱うということ

数多くあるスポーツインストラクターの中からなぜ「ピラティス」を選んだのだろうか。

「ヨガは思想を大切にするのに対して、ピラティスは純粋に体を使う理論的なトレーニングなんで自分に合ってると思って」

近年ではリハビリテーションの目的としてもピラティスが取り入れられている。「他のどのスポーツとも相性が良いんです。まさに白いごはんのように何にでも合うんですよ」。

また、ピラティスは負荷を自分で調整できるトレーニングだという。だからこそ、彼女にピラティスを習いに来ている一人ひとりの状態や心情を観察することが必要になってくる。心技一体という言葉があるように、心と体は引き離せないもの。「その人の体を通して、心の気づき、心のケアも一緒にしていきたい」。

彼女がインストラクターを続ける背景に「人の体」や「心」に対する興味と、それを通して生徒の健康に寄り添っていきたいという想いがある。

ある生徒さんとの出会い

フリーになった当初はレッスンを詰め過ぎ気味だった。多い時は1日5本レッスンを行う日もあったそう。「自分と向かい合う時間がありませんでした」。

さらにグループトレーニングには、いろいろな生徒が参加する。時には、指導した内容を理解せず、ただ参加をしに来ているだけという状態の生徒も訪れる。

「当初は、それにものすごく腹が立ってね。なんで動いてくれないのか? 何しにきたの? そんな風にばっかり思っていて」

ハニカミながら話す彼女は、当時のことを振り返りながら語る。

「何でこの人のことが腹立たしく思うんだろう!って思い詰めました。好きになろうと思えば思うほど、嫌いになって会いたくなくなってしまって……。だんだん笑えなくなっていきました」

来ている生徒さんを平等に見られない自分を責める一方、何とか突破口を見つけようと、人付き合いについての実用書を読み漁った。そして、ある決断を葛西さんはくだす。

「その人が嫌いだということを認めました。生徒さんを嫌う自分を認めてあげたんです」

レッスンの本数も少しずつ減らしていった。そして、心境の変化に気づいていく。

「ある日、その生徒を前にして、“この人はこれでいいんだ”って認められた瞬間があったんです」

人は変えられない。そうであれば、自分が変わるしかない。それを実体験として学んだ瞬間だった。それ以降、その生徒とも上手くコミュニケーションがとれるようになったそうだ。

「まずは完璧でない自分を許すこと。そして、相手も許すことを学びました」

人を変えることはできないかもしれない。そうだとしたら、自分が少し見方を変えたり、立ち位置をずらしたりすることが大事なのだろう。「頭でわかっていても、心に落ちてくるまで時間がかかる。そして実際に行動に移せるようになってはじめて楽になるんですね」。

葛西むつ美さん

「苦しく悩んでいきたい」

生徒たちとの関わり方に関して、葛西さんは今一番の“壁”を感じている。「ドクターは診断できるけど、インストラクターにはできない」という問題だ。

葛西さんは、その日その日によって、生徒の雰囲気の違いに気づくのだそうだ。

一番わかるのは1週間に1回のペースでレッスンを受けてくれる人。毎日会っていたらおそらく気づかない変化を、1週間という期間を空けると顕著にわかるのだそうだ。前回と同じメニューをしていても、息が上がってしまったり、明らかに体力がなくなってしまったりしている生徒を見るととても心配になる。

インストラクターは医者のように診断はできないけれど、診察へ行くよう促すことはできる。ただ、その言い方も難しい。下手に伝えて、生徒を不安にさせてはいけない。どうやって、自らの意志で病院に行こうと思ってもらえるか……。先輩インストラクターなどにアドバイスを乞う方法もあるだろうが、彼女は敢えてそれをしない。

「自分で考えたいからね」

ベテランの先輩に聞けば早いのかもしれないが、実際にその生徒を良く知っているのは葛西さん自身だ。「そこは自分で言葉を選んで伝えていきたい。自分で苦しく悩んでいきたい」と話す目には、強い意志がこもっている。その壁を乗り越えた時、2倍も3倍も大きく飛躍するのだろう。

「プ女子」=プロレス好き女子

葛西さんは「プ女子」である。「え? プ?」と聞き返してしまったのだが、皆さんはご存知だろうか?「プロレスファンの女性」のことを「プ女子」というそうだ。

「高校の時、テスト勉強で深夜まで起きていた際、たまたまつけたテレビで新日プロレスがやっていたんです」

最初は女子プロの方にハマったそう。

「プロレスは全部シナリオ通りに進んでいくんですよ。それが本当にすごくて!」と熱く語ってくれた葛西さん。今回は昼の時間に取材したので叶わなかったが、もしお酒が入っていたらもっと熱くプロレス話をしてくれたのだろうと思う。次回はビールを交えて話を聞いてみたいと思った。


5年後、10年後の明確なビジョンはまだないが、漠然と「こうなりたい」というイメージを持っている。それは、生徒の中には40代やそれ以上が多く、自分の将来を重ねやすいからかもしれない。「近々また格闘技を始めようかな」と、アクティブにポジティブに進んでいく葛西さんの姿に元気づけられる人も多いのだろう。でも、くれぐれもケガには気を付けてほしい。応援していきたい。

座右の品
吉田松陰『覚悟の磨き方』

『吉田松陰』を知った本。めくって1ページ目にある“この命をどう使い切るか。ついに志を立てる時が来た。”を読んで鳥肌が立ちました。周りとは一風異なっていた型破りで勇敢な松陰と、人と同じとことをするのがキライ!という思いが重なって感銘を受けました

【葛西むつ美 さん略歴】

【生年月日】1978年12月9日生まれ 0型 いて座 【家族構成】父、母、姉 【略歴】世田谷芦花小学校→芦花中学校→大東学院高等学校→鎌倉女子短期大学中退→フィットネス会社→アルバイト→フリーランスインストラクター 【趣味】プロレス観戦(プロレスリング・ノア所属の小峠篤司選手が大のお気に入り) 【お気に入りスポット】多摩川(川)、海 【特技】たくさんビールを飲めること! 【好きな食べ物】ビール!(アサヒとハートランド押し) 【嫌いな食べ物】いくら 【好きなタイプ】豪快な人、筋が通っている人。見ていて気持ち良いから! 【嫌いなタイプ】細かい人、言っていることが小さい人。
ブログURL:カサイムツミブログ http://ameblo.jp/pilates623/

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2015-5-18-Mon






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