山本タク 劇団「Afro13」

山本タク 劇団「Afro13」

長らく休業していた弊紙「東京ふつうの人新聞」。その間に首相は変わり、欧州では経済危機、中東・北アフリカでは革命が起きた。そして日本だけでなく世界中に大きな衝撃を与えた日本大震災。いまだ復興計画は具体化しておらず、福島第一原子力発電所の事故による「放射能不安」も収まる気配を見せない。昨日までの価値観が根底から覆されてしまう寄り所のない現代に、弊紙に何ができるだろうか。その答えはまだわからないが、これからも交換不可能な“個”から“個”へ情報を発信していけたらと思う。

さて、「東京ふつうの人新聞」復活の第一弾を飾ってもらうのは、役者、演出家、作家として活躍する山本タクさん。今月14、15日に行われる舞台『エレキ私立 さきあい学園』の作・演出を手がけている演劇人だ。舞台をプロデュースしている中野裕理さんと、同舞台の出演者で、アイドルとして活躍中の朝倉咲さんをゲストに交え、演劇人の「ふつう」について話しを聞いた。(文責:吉田直人)

山本さんと「演劇」

山本さんが、演劇の世界へ入ったのは、高校を卒業してから。芝居をするつもりで上京をしたが、彼にはそれまで芝居の経験など全くなかった。劇団に入り、ついに踏んだ初舞台。「そのときの八ミリがあるんですが、見るともう、ほんとひどくて……」と言いながらも、「でも、捨てられないんですよね」と笑う。その後、劇団「Afro13」に所属。現在では、役者としてシリアスから、観ていて思わず体が動いてしまう白熱のアクションまで多彩に演じ、観客を魅了している。さらに、作・演出や学校の講師まで務め、演劇を軸に多方面で活躍している。

そんな「演劇人」山本さんは、現在の演劇を取り巻く環境をどのように見ているのか。

「以前、海外で芝居をしたときに思ったことがあって。向こうの人達って、日曜日とか平日でもアフターファイブとかに『芝居でも観に行くか!』みたいな気楽な雰囲気があるんですよ。公演中も客は常に笑っていて、ずっと声が聞こえていて、日本とは全然違うなって」

日本と比べて、海外では「演劇」というものが生活や社会の中で身近な存在であるようだ。演劇が一部の人間、ことに演劇人の間のものになってしまっている問題については、弊紙でも何度も扱ってきた。

「だから、日本でも芝居の敷居を低く、というか敷居をなくしたい」と山本さんは話す。「静かに観るのもいいと思うんです。ただ、もっと自由に、たとえばライブを楽しむみたいな気持ちで遊びにきてもらってもいいと思う。ポップコーンとか食べながら観ていたとしても、引き込まれる場面では手は止まるはずですから」

「演劇」と社会の関わり

一部の有名人以外、映画やテレビと比べると、不当に過小評価されてしまいがちの小劇場の演劇。以前、筆者は記事で「演劇の地位向上」を目指す女優を紹介したが、山本さんは、どう考えているのだろうか。

「演劇って社会的地位が低いじゃないですか? そこで必要なのは、自分がどういうふうに世間と関わっていくかってことだと思います。つまり、演劇人たち個人個人の社会との関わり方だと思う。僕は仕事として『演劇』をやっているから、今度の公演も、ただ好きなことをしたいというよりも、キャストの人たちがこの仕事をもっと好きになってほしいっていう気持ちでやっています」

どんな職種、業界でも同じことがいえるのは、社会の中での自分の位置づけを各々が意識して、やりがいを見つけていく過程が重要だとこと。演劇という特殊な「職種」だからと言って、何ら変わりはない。山本さんの眼差しは、“同業種”の後輩たちへも向けられている。

あっちの“ふつう”にこっちの“ふつう”
一方、大きな夢を描けるのも、演劇という「職種」のいいところ。山本さんにとっての“ふつう”とは「ビッグになること」であり、それを目指し、突き進んでいくことが彼にとって“ふつう”だという。

しかし最近、友達の子どもを見たりしていると、結婚したり、家族を持ったりという幸せを、「もしかして、これが“ふつう”かもしれない」と思うようにもなった。「そっちの“ふつう”と、こっちの“ふつう”は遠いと思ったりして」と笑いながらも、「自分の好きなことを、できるだけふつうに仕事としてやっていきたい」と決意を語る。

「感覚としては、たぶん他の仕事をしている方々と全く同じだと思います。いい商品やサービスを作って、それを買ってほしいっていうのと、いい舞台を作って、多くの人に観てもらいたいっていうのは、同じことですから」

誰かにとっての“ふつう”と、他の誰かにとっての“ふつう”は違うものかもしれないが、どれほど乖離していても、どちらも当事者からしてみると同じように“ふつう”である。改めて考えれば、しごく当たり前のことのようだが、何事にも優越をつけてしまいがちな私たちが物事を捉えるときに必要なのは、そんなフラットな感覚なのではないだろうか。

山本タク

震災とエンターテイメント

前編では、山本さんにとっての「演劇観」について触れた。後編では「演劇人」として感じている震災後の気持ち、考えを聞く。また、ゲストの二人も交え、今週末に行われる舞台『エレキ私立 さきあい学園』を取り上げていきたい。

今年の3月11日起きた東日本大震災。現在もなお行方不明者や、多くの傷をもたらしているこの天災は、被災者だけでなく、すべての人間の価値観や人生観をひっくりかえした。

演劇界への影響はまず、フライヤーに現れた。震災後、どこの劇団の公演案内も、当日パンフレットにも「今回の公演は見送るべきかと悩みましたが…」というような内容の一文が必ず入っていた。文面から、公演を行う側の人間たちの葛藤が伝わってくる。

「正直、演劇なんてやっているわけではないって思ったときもありました」

山本さん表情が真剣なものになる。「こういう仕事、エンターテイメントっていうものは、世の中が平和でないと成り立たないものなので。でも、エンターテイメントっていうものは、『衣、食、住』とは関係ないけれど、それらと同じように世の中に絶対に必要だと思う」

そして山本さんは、覚悟のこもった声で続ける。「だから、エンターテイメントをプロとしてやっていく者として、周りがどんなにつらい状況のときでも、人を楽しませることができる人間でいたい、と今では思っています」

葛藤しながらも、エンターテイメントを続けていくという強い覚悟。続いては、そんな山本さんが演出した作品『エレキ私立 さきあい学園』について、ゲストの話も交えて聞いていきたい。

「プロデューサー」としての中野裕理さんの顔
「お芝居をしていて、“女性が熱くなる”物語が、実はあんまりなくてですね」

今回、プロデュースを手がける中野裕理さんによると、進歩的に思える表現の世界でも、そのイメージとは裏腹に、実際は保守的な内容だったりするという。登場する女性たちは、「控えめ」で、戦いに行くのは男たち。女性はそれを「待っている」という話が多いそうだ。

「私が今までやりたかったことは、“女の子たちだけで熱い芝居”。ずっとそう思ってきたけれど、今回の企画でかなり方向性が決まってきたかんじがしています。れからは女性が戦いに出て行く時代だと思う」

女の子たちが多数登場する今作品だが、男性ファンだけでなく、多くの女性たちに元気を与えるような内容になっている。「熱い作品ですから、女性の方にも、たくさん観にきてもらいたいです」

今作が“初プロデュース”だという中野さんからは並々ならぬ気合が伝わってくる。劇団に所属しているときから、大道具やってはクビ、衣装をやっては他へまわされ、ついには「お前は役者だけやっていればいいから」と言われてしまい、ほとんど制作をやったことがなかった彼女にとって、何もかも初めてのことづくしの一歩となる。

かつて、舞台の外ではちょっぴりおっとりした女の子だった中野さん。三年経った今、たくさんのキャストたちをまとめ、場を仕切り、打合せから何から分刻みでこなす大人の女性へとなっていた。

もうすぐやります!!『エレキ私立 さきあい学園』
「山本さんの台本て、すっごく台詞がいい。それを女の子たちが話したらどんなふうになるか……本当に楽しみ!」

そう期待する中野さんに、「恥ずかしいことを面と向かって言うことって、いつも言っていたら変だけど、言うべきときは言うものだと思うから」と、山本さんの台詞に対するこだわりを話す。

今回の公演の見どころについてを聞くと、「とにかく女性たちが熱くがんばるところ」だと中野さんは繰り返す。「会場がライブハウスなので歌とか、空間全体を楽しみにきてほしいですね」と山本さん。

最後に、出演者である朝倉咲さんにも、見所を聞いてみた。

「通常のお芝居だと、役柄と自分って当然違うんですけど、今回は『本人役』として自分を演じるので、作った自分ではない自分が見せられると思う」。実際に運動会の競技をやったり、観客を舞台に上げたりとライブみたいな作品になっているところも見どころとのこと。

「今の心情をストレートに届けたい。アイドルをやっているからなのか、人としての部分なのか、わからないけれど、そういう等身大の自分と観客との共感を生めたらと思っています」(朝倉さん)

『エレキ私立 さきあい学園』は10月14日(金)、亀戸yanagi/15日(土)新宿LRDにて公開。詳しくは→ http://eleki-shiritsu.info/

座右の品
『仕事の報酬
とは何か』
(田坂広志)

友達が差し入れとして持ってきてくれて本。 楽屋で読んでぼろ泣きしました。 僕と同年代で演劇をやっている人にオススメします!

【山本さん略歴】

1980年11月1日生まれ 山口県防府市出身/東京都世田谷区在住 防府市立牟礼南小→同国府中→私立多々良学園高→上京→某劇団にて初舞台→劇団「Aflo13」所属。現在、役者、作・演出、など多方面で活躍中【星座】さそり座【血液型】B型【家族構成】父、母、兄、弟【趣味】一人旅【お気に入りスポット】伊勢神宮【尊敬する人】ジョージ・バーナード・ショウ【好きな食べ物】スイカ、そば【嫌いな食べ物】ない【好きなタイプ】控えめで、トンチンカンで、頭がいい人【嫌いなタイプ】ごはんを無理やり食べさせる人(笑)【座右の銘】「思い続ければ、石の上にも花は咲く」【子供のころの夢】人前に出ることをやるようになるだろうな、とは思っていました。

朝倉咲さんのブログ→ http://ameblo.jp/asakuracha-n/

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2011-10-12-Wed






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