算術 山田一希

福島から上京してきて、そろそろやっと1年。
山田一希さんは現在大学1年生。あらゆる音楽を聴き、バンドではグルーヴィーなギターを弾く。けれど19歳とは思えない、物事に対する自然な情熱が伝わってくる。いや、これが今の普通の10代なのかしら? 謎は消えないが山田君はとにかく、奥深くて「それだけじゃない」という言葉が似合う、平成生まれの大学生である。(文責:富永玲奈)

「自分はほんと普通の人ですよ」

とにかくたくさんの音楽を聴く。持っているレコードとCDを合わせると約400枚。進学のために上京して、いいライブやレコード屋がたくさんある東京を山田君は気に入っているという。「こっち(東京)に来れてよかった。明日はビョークのライブ行くんです」と嬉しそうに話す。ちなみに取材の後も下北沢のレコード屋をハシゴしていた。

地元にいた時は、田舎特有の閉鎖性に少し憤っていた。たとえば日本人のサッカー選手が世界で活躍して盛り上がっている試合をテレビで観ても、「何だか世界が違う、自分とは関係のない感じがしていた」と話す。「一生楽しいことがないんじゃないかと思っていました。それが辛かったし、追い詰められてましたね。今思うとそんな追い詰められるようなことでもないと思うけど」。

そんな思いもあり、また「面白いことが多そうだから」という理由で、地元ではなく東京の大学を選んだのは、山田君にとって正解だっただろう。しかも進んだ大学も、フィッシュマンズなど好きなバンドが巣立ったからという理由で選んだ。やはり音楽面でのいい出会いを期待していたに違いない。そして早速、大学で入った音楽サークルの仲間などと「算術」というオリジナルのインストバンドを組んだ。そんな大学1年目が終わろうとしている今、「上京してから思ったとおり、いろいろ楽しい」という。見たいライブに行き、大学で音楽を通して交友関係が広がり、自分のやりたい音楽のバンドを組み…と1年で着々と山田君は前進しているのが確かによくわかる。

しかし躍起になって前進というよりも、自然の成り行きでそうなっていっているような印象を山田君は醸す。おそらくそれは、彼自身が自然だからだ。カッコつけたり、ツウぶったりしない。自然でわざとらしいところがない言動どおり、「自分はほんと普通の人ですよ」と山田君は言う。「でもまわりからはそうじゃないって言われます」。

「そうそう、だから俺スノッブが嫌いなんですよ!」

そんな「自称普通」の山田君がギターを始めたのは小5と早い。当時流行っていた邦楽で音楽に目覚め、家にあったフォークギターを弾くようになった。6年生でエレキギターを買い、それを今でも使っているというのには驚かされる。しかしギターを手にした以外は何も変わらず、テレビも見るし野球の大好きな、普通に無邪気な小学生だった。中学に入ってからもギターは続けたが、野球部に所属するやはり普通の中学生。「バンドを組みたいと思っても、まわりに音楽をやっている人はいなかった」。ちなみにこの頃は、音楽は好きだけれど聴くジャンルの幅を広げたり、古今東西の音楽への造詣を深めるようなこともまだなかったようだ。

もっとも山田君にとっては高校卒業だってまだ1年前、ついぞこの前のことなのだが、いろいろな音楽を一気に聴き始めるようになったのは高校に入ってからだという。高2のときマイルス・デイヴィスを聴き衝撃を受けた。そしてフランク・ザッパオウテカなど、とにかくいろいろ派生して音楽を聴くのが楽しくなった。今はアナログ・レコードばかり聴いているという彼だが、そうなったのも高校時代。よりいっそう、聴く音楽の世界がどんどん拡がっていくこととなった。

彼には、どうやらその時々の関心事を自然に自分の糧にして楽しむ素質が生まれつき備わっているようだ。今の生活でも音楽が一番楽しいけれど、薬屋でバイトをして家ではネットをする、そんな普通の学生生活もそれとして楽しんでいる。

「普通の人って何でしょうね。人によるし…あ、だからこそ聞いてるんですよね(笑)。自分は普通でありたいし、根源的な嘘をついたり、飾り立てたくないんです。ビョークとか、ぶっ飛んでるし普通じゃないっていうのはたしかにわかるんですけど、あれだってビョーク本人にとっては嘘がなくて普通なんですよ、きっと。自然に表現している。だからすごいんだと思います」。普通とは何かを問われ、悩みながらも淡々と山田君はそんなふうに答えた。

「奇をてらうのは絶対悪い、とは思いませんし、差異化には奇をてらうってラクですけど、それでいいわけじゃないだろって思ったり。そうそう、だから俺スノッブが嫌いなんですよ!」。

もうこの言葉そのものが、山田君がどこぞのスノッブよりも本質的に面白い人だということを物語っているといえよう。うわべだけ飾った人間では決してないし、そして「根源的な嘘をつきたくない」というように、彼自身もそうでありたいと思っている。本人は普通にやっていることなのに他人から見てそうでないものこそ、その人独自の面白さなのだろうから。

何かと焦りを感じることもあるそうだが、まだまだ始まったばかり。自然に話し、自然に音楽を聴き、自然に表現しながら自分の世界を広げられる山田君の未来は、何だか面白いことになりそうだ。

座右の品
OK FRED

受験中、勉強の合間によく読んでいた音楽誌。明るくて、フットワークが軽いのが気に入っている。今でもレコードを聴きながら読むのが癒しです。

【略歴】

荒舘小学校→北会津中学校→福島県立葵高校→明治学院大学法学部法律学科【生年月日】1988年4月15日生まれ【出身地】福島県 現在神奈川県横浜市在住【星座】おひつじ座【血液型】AB型【家族構成】父、母、姉【趣味】音楽鑑賞【好きな食べ物】チョコレート【嫌いな食べ物】卵【お気に入りスポット】レコード屋【尊敬する人】笑福亭鶴瓶、上原ひろみ【座右の銘】継続は力なり【好きなタイプ】木村カエラ【嫌いなタイプ】スノッブ【子どもの頃の夢】野球選手

【「算術」音源はコチラ】http://myspace.com/sanjutu

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2008-03-10-MON






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