加藤友也:

10年間、トラックの運転手をしていた。毎日、何に対しても満足できなかった。その頃、4年間付き合っていた彼女にも振られた。自分の居場所というものがなかなか見つからなかった。彼が見つけた自分の居場所−それはカナダだった。「自分の人生が180度変わった」。そう話すのは現在、外国人モデルエージェンシーでマネージャーとして働いている加藤友也さん(32)だ。(文責:須藤エナ)

履歴書を持ち、不慣れな英語で職を求めた

得意の英語を生かし、翻訳をする。出版関係者やカメラマン、スタイリストと一緒に働き、時にはコレクション会場に出向き、ショーでの華やかさをじかに感じる。「モデルと一緒になって一つの作品を作りあげることは大変だけど毎日が刺激的」。大好きなファッションに囲まれ、流行の最先端にいる。だが将来、加藤さんはこの刺激的な生活よりも、居場所を見つけた大好きな人たちが暮らすカナダに戻りたいという。

カナダでの生活は苦労の連続だった。

アジア人の自分が白人社会に入ることがどれほど大変だったか痛いほど感じた。溶け込めるまでには孤独との戦いだった。英語も全然話せなかった。それでもカナダに行く前に決めていたことを守ろうとあがいた。「仕事をするなら絶対に日本でも働ける環境は嫌。日本人がいない所でどうやって自分が働けるのか知りたかった」。

ここまで自分を追い込んだのはカナダ行きを決めた理由の一つに「自分探しの旅」も兼ねていたからだ。目的も無くダラダラと過ごしていた運転手生活を変えたかった。人に何でもいいから認められたかった。

ワーキング・ホリデーで渡航する日本人の多くは最初、2〜3ヶ月は語学学校に通い、英語のスキルを上げる。その後、仕事探しを開始する人が大半だが加藤さんはその逆だった。「お金がそんなにあったわけじゃなかったのでまずは生活費を稼ぐことを優先した」。

仕事探しの方法は自分の履歴書を持って店に配るという古典的なもの。目に留まれば働けるが、連絡がない場合は日本で言う書類落ちになる。現状は厳しく、Red Robin(レッドロビン)というアメリカとカナダに展開しているファーストフード店に履歴書を持っていったが、4回も断られるはめになる。しかし、相手にされなくてもめげず、「連絡をくれないなら」と、自分から出向いていって、なんとか面接までこぎつけた。

しかし、待っても電話がかかってこなかったため、自ら来店し、店のマネージャーに直接会った。世間話の後に「ここで働くには英語が話せないといけない。ミーティングもしなければならない」と痛い現実を突きつけられた。

それでもひるまなかった。「働けるなら何でもします。僕は片道のチケットしか持っていないし、ここで働かないと生活出来ないから何でもする」と不慣れな英語で一生懸命伝えた。その熱意が伝わったのか、入店することになったが、やはり言葉の壁に苦しんだ。

「僕の考える“ふつう”はもう一度、カナダに戻って大好きな人に囲まれること」

そんな状況を変えてくれたのは職場のムードメーカーのグエンだった。「誰も話しかけてくれない中、僕に挨拶してくれたしたくさん英語を教えてくれた」。そして店のスタッフに「ユーヤは面白い奴だぞ」と紹介してくれた。

次第に仲間として認められるようになり、友達もたくさん出来るようになった。一軒家を借りての共同生活やハウスパーティー。好きな音楽と気の置けない仲間に囲まれた生活は毎日がパラダイスだった。しかし、楽しい生活が1年も続くと今度は逆に日本に帰国する不安のほうが大きくなっていく。「ここで築き上げた環境や空気感を失うのが怖かった」。

それでも彼に帰国を決意させたのは金銭面の問題と日本でも自分を伸ばせる環境があるかもしれないという思いだった。

最近では、「帰国して良かった」と思えるようになった。「現在の会社では学ぶことも多いし、視野が広がった。不安や不満はどこにいてもあるけれど色々な人に感謝出来るようになった」と大好きなファッションや雑誌に囲まれ忙しい毎日を送っている。また、今年でカナダを離れて2年の月日が流れようとしているが、相変わらず当時の仲間との関係も良好に続いているという。

「何かに対して一生懸命に頑張ると自信に繋がるということがわかった」と海外生活を振り返り、ひと回り成長した彼は素敵な笑顔を見せてくれた。加藤さんは人情深く、貪欲な人だと思う。「世間では僕の年では結婚して子どもがいるのが当たり前かもしれないけれど、僕は結婚にも興味がないし、そもそも結婚している自分も想像つかない。僕の考える“ふつう”はもう一度、カナダに戻って大好きな人に囲まれること」。

なんとも自由な人だ。でも彼には漲るパワーと人を惹きつける魅力がある。加藤さんのメガネの奥にある瞳は、将来、自分が住むべき居場所をきちんと見据えているからか、眩しく輝いているようにみえた。

座右の品
メガネ

すごく負けず嫌いで気が強いけど実はシャイで臆病な性格。メガネをしているとそれが和らぐ気がするし、素になれる。最初はお洒落として身に付けたが今は自分のトレードマークになっていると思う。

【略歴】

1976年3月3日 愛知県安城市生まれ→同市内小学校→同市内中学校→同市内高校→運送会社勤務(10年間)→WHでカナダ、バンクーバーへ→帰国→外国人モデルエージェンシー勤務【星座】魚座【血液型】B型【家族構成】祖母、父、母、弟2人、犬【趣味】旅行【好きな食べ物】ハンバーグ【嫌いな食べ物】特になし【お気に入りスポット】カナダのホワイトパインビーチ【尊敬する人】クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)【座右の銘】「Go with the flow(=時の流れに身を任せて)」【好きなタイプ】人に頼りすぎない人【嫌いなタイプ】争いごとが好きな人【子どもの頃の夢】コックさん

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2008-05-12-MON






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