ビンタン・カルニア・アクバル インドネシア 東京大学大学院生:

彼の名はビンタン・カルニア・アクバル。苗字はない。全部名前だ。通称ビンタン。「インドネシアにいる時は苗字なくても不便なことはないんですが、国際的な場では書類欄とかで苗字が必要なってきたりするんで苗字作ろうかなと考えてます」。韓国や中国には国際的に憶えてもらえ易いイングリッシュネームを持つ人もいるが、「苗字」とは斬新だ。東京に滞在してかれこれ7年、日本語完璧でフェス好きな東大の院生。春からは日本の商社で働くことになる。(文責:保科時彦)

会社員の初任給は5万円、奨学金で東京大学へ

ふつうの日本人にとってインドネシアのイメージと言えばやっぱりバリ島だろう。あとはデヴィ夫人がスカルノ元大統領夫人ということは知っているが、あまり馴染みが無いというのが一般的な実感だと思う。実は人口2億4000万人を抱え(今のところ。今後パキスタンに抜かれる可能性があるが)世界第四位で、世界一多くのイスラム教徒がいる国(国教ではない)なのだ。ではインドネシアのビンタン君はどうやって日本に興味をもったのだろうか。「小さい頃、日本に興味を持ちました。アニメなどの文化はインドネシアにもあったのでそこから日本について知るきっかけになりました。でも一番のきっかけはとある雑誌でアジアトップの大学として東大・京大が紹介されているのを読んだことです」という。

では留学のきっかけは何だろう。「もし留学していなければ医者になっていたと思います。医学部も受かっていましたから。奨学金がもらえたということが一番決定的でした。ホントはアメリカに留学したかったんですが、そっちは落ちまして、、、。親から経済的に自立したかったっていうのもあってノリで留学しました。今も奨学金とバイトで生活費をまかなってます」。

「ノリで留学」と言ってもその担保となるのは当然学力で、奨学金がなければ相当な裕福な家庭でなくては留学できないのがインドネシア事情だ。「ふつうの会社員の初任給は日本円にして大体5万円程度、日本のようにアルバイトが多くないので、フリーターで生計を立てることもできません。都会と地方ではかなり差がありますが、都会の進学校でも240人中10人くらい、全体では1パーセントにも満たないでしょうね」。日本語に関しては「遊んだり、音楽を聴きながら覚えた」というビンタン君、1年くらいでテレビ番組が楽しめる程度に上達したというから、かなり早い。

商社に内定、不安は「フジロックに行けるかどうか」

そんなビンタン君に恋愛について聞いてみた。「結婚したいですね。三年以内がいいかな。彼女はいないですが。インドネシアでは結婚は早いんですよ。都会で女性22・23歳で結婚します。男は25歳くらいです。子どももいっぱい欲しいですね。80年代からインドネシアは二人っ子政策ですが、実際は3人くらいいますよ」。ビンタン君は敬虔なムスリム(イスラム教徒)なので婚前交渉はしないようだ。信仰心があれば、つまり「そういうものだ」と思っていれば、婚前交渉なしでも平気なのだろう。宗教は違うがブラジルのサッカー選手カカのような感じだ。

もっともこれはインドネシアのムスリム全員に当てはまることではない。インドネシアのイスラム教は世俗主義なので個人差がかなりある。ビンタン君は酒も豚肉も食べないが、それも「僕は個人的に飲酒しないし、豚肉は食べないですが、飲む、食べるはその人次第だと思います。イスラム教の問題というより個人の問題ですね」と説明する。肝心の結婚相手については「よくわからないけど、インドネシア人と結婚しそうな気がします。日本人の女の子はかわいいと思います」とのこと。

ところで日本人留学生といくつかの国からの外国人留学生の大きな違いの一つは留学後のことだ。日本人留学生の大多数は「帰国」を前提としている。運良く仕事が見つかったり、結婚相手を見つけた場合は現地に留まることもあるが、そうでない場合は「帰国後の自分」と否応なく向き合わされながら生活する。「インドネシアの留学生は現地に留まって仕事を探すことが多いですよ。日本人留学生なら日本に職がありますが、インドネシアの自力で頑張ってる人は現地に残ります。裕福な家庭の人は帰国して家業を継ぐことが多いようですが」。国によっては、また個人によっては留学、あるいは外国に滞在することの意味そのものに差があることを留意しなくてはいけないようだ。

「日本の商社は国際的な展開をすることになると思うし、対人関係やビジネスを学びたかった。その上で自分の日本語力を活かせると思ったんです。」という発言もうなずける。

商社に内定を取ったビンタン君、これからバリバリ働くのだろうが、一つ不安があるようだ。「来年はフジロックに行けるかどうか。それが心配です。今まではプレスとしてフジロックで取材して、それを記事にしてインドネシアの音楽雑誌に送ってたんですが、それももう無理でしょう」。確かにこれはフェス太郎にとっては大事なポイントだ。

座右の品
11分間

売春婦の話。哲学的で面白く書けていると思う。これを読んで知的な人間になろうと思った。

【略歴】

1983年12月6日生まれ 23歳 インドネシア・ジャカルタ出身 東京都世田谷区在住 SMP(中学)アル・アズハル・ブカシ→SMU(高校)81ジャカルタ→三井物産奨学生として留学、東京大学工学部化学生命工学科→同大学大学院工学系研究科同学科専攻【星座】射手座【血液型】A型【家族構成】父母妹弟【趣味】音楽、映画、旅行【好きな食べ物】柏駅の天ぷらそば【食べられないもの】アルコールと豚(多分食べれば味は好きだろうと思う)【お気に入りスポット】自由が丘(東京都世田谷区)【尊敬する人】高田純次【座右の銘】適当【好きなタイプ】特に無し【嫌いなタイプ】口ばっかりで行動しない人【子どもの頃の夢】新聞記者【日本で得たこと】実力主義的考え。自分を助けるのは自分しかいないという意識 【日本に来て失ったもの】「困ったら誰かが助けてくれる」というインドネシアのコミュニティ的感覚【日本で一番苦労したこと】食べ物、ノミニケーション(でも理解のある友人に恵まれた)【これから流行ると思うアーティスト】エイミー・ワインハウス

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2007-08-27-MON






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