中岡義光: 東京ふつうの人新聞

「30越したら、すごくおもしろくなってきましたね。いろんなことが」。

スポーツ、バンド、サーフィンそして勉強に至るまで、男子が何かをはじめる初期衝動の99.9パーセントは“モテたい”から。これだけである。その初期衝動を様々なモチベーションに変えながらみんな続けているのではないだろうか。(文責:吉田直人)

ダンス少年、熱い思いを胸に上京

「MCハマーの『You can’t touch this』を聴いたときに雷に打たれたような気持ちだった」。80年代、“ダンス甲子園”の影響もあり若者の間には空前のダンスブームが到来していた。それまでダンスなんてものは知らなかった中岡少年も、MCハマーの啓示を受け、ダンスを始めたのだった。河原で一人躍っている彼の姿は、田舎町の人々には奇異に映り、当初は白い目で見られていたものの、一人、また一人と仲間が集まっていく中で、町の人々から応援されるようになる。

「それまで何てことなく過ごしていたのだけど、“何かやりたい”って思いがあったんだと思う」とかっこいいセリフ。ダンスに出会った中岡少年は水を得た魚のごとき気分だったのだろうか。「…根本には“モテたい”って気持ちがあったんだと思います。女子の気をひきたかったみたいな」やっぱりね!それでこそ男子。正直で大変よろしい。

高校卒業後、就職してからもダンスを続け、20歳ころまでは文字通り“ダンス漬け”の日々を送った。しかし、次第に仕事が増えダンスなんて言っていられないようになっていく。そんな自分に中岡さんは悩みはじめるのだった。くしくも時代は激動の90年代へ突入、バブルがはじけた。悩む以前にバブルのあおりで会社が傾いてきた。「『ホームレス中学生』じゃないですが、“解散”みたいな」彼は、会社が潰れる半年前に退社。“ダンスで勝負してみたい”熱い思いを胸に上京する。「福岡では持ち上げられていたんですよ」先に上京していた仲間とダンスイベントやコンテストへ出たが東京の壁は高かった。

ダンス以外のことも見てみたくなり、刺激を求めて「北区つかこうへい劇団」の公演を観に行き、人生2回目の雷に打たれる。パンフレットに載っていたプロデュース公演のオーディションを受けて見事合格。このとき初めて芝居をしたというのだからアグレッシブな男だ。その後はフリーで役者をやる一方、興味が役者に向いたためにダンスの活動は減っていく。2001年にやったGacktのバックダンサーが最後だ。

偏見をなくし誰もが“ふつう”でいられる世の中に

「“芝居をするやつはハングリーじゃないといけない”という人がいるけれど、そうは思わない。生活をしていかなくてはいけないのだから。余裕がないやつの芝居なんて見たくないじゃないですか?」アルバイトをしながら活動をしていた時期もあるが、現在は正社員ではないものの、以前やっていた空調設備の仕事をしながら活動をしている。

“ふつうでありたい”

中岡さんは言う。「表現ごととかをやっていると“望んでいない注目”というのがけっこうあるんですよ」役者をしていると人に話すと“すごいですね”か“へー、そんなことやってるんだ”よくも悪くも奇異の目で見られてしまうことが多い。なぜだろう?それが「建設会社で働いています」とかなら奇異の目で見られないのに。

人は自分の経験した、あるいは経験から想像することができる範囲のものは理解できる。“特殊”ではなく“ふつう”であると認識することができる。それを超えているものは認識できないので畏怖畏敬を感じるのだ。それは当然のことだし、人間が偏見や先入観を持ってしまうことも仕方がないかもしれない。

ただ、自分が選びとって経験してきたことなんていうのは世界のほんの一部。それ以外の“ふつう”が存在することをちゃんとどこかで持っておく必要があるのではないだろうか。大企業の社長も、非正規雇用者も、プロスポーツ選手も、専業主婦もみんなそれぞれの暮らしがあって、その数だけ“ふつう”が存在する。職業や人種や住んでいる地域や外見が違ったって、同じ人間。同じだけど、みんな違った“ふつう”を持った同じ人間。 “ふつう”という概念は人と人の関係性の中で生まれる。ここで言う“ふつう”とは「すごくない」という意味ではない。先入観や偏見を捨てて、「あなたも私もどちらも“特殊ではない”ですね」と、相手を理解する「おもいやり」のことだ。

先日、アメリカに史上初の黒人大統領が誕生した。アメリカの抱える、奴隷輸入以来の暗い歴史的偏見が変わろうとしている。本来はどんな人種だろうが大統領になれて“ふつう”であるべきなのだ。

「異端に見られたくない」ダンスやっているときから、中岡さんの感じていたことだった。そういう偏見をなくしていけたら、きっともっと楽しくて生きやすい世の中になる。

「20代半ばから後半は落ち着きがなかった時代だったな」。冒頭の言葉の続きだ。「20代のころは可能性を模索しつづけていたけれど、30を過ぎてある程度年をとってくると、考え方がシンプルになってくるんですよ。物事をちょっとだけ分かってきたのかな」と笑う。

中岡さんが小劇場での役者をやめていて、もやもやして過ごしていたとき「うちにこないか」本格的に一緒にやろう、と声をかけてきたのが、現在所属している劇団「キットハンサム」の代表、河野賢さんだった。「“まじめにふざけている”団体『キットハンサム』。今は『キットハンサム』として続けていける環境を作っていきたい」 そんな中岡さんが企画・構成する公演。

がっぷり企画『課外授業』(2008年11月15日(土)14:30/ 19:00 、16日(日)14:00 /18:30 阿佐ヶ谷アートスペース・プロットにて。出演:河野賢(キットハンサム)ほか。

「コント、お芝居、映像と…単純に楽しんでほしい公演ですので、軽い気持ちで観にきてほしいです」“男は30過ぎてから”あの日MCハマーに憧れた少年の旅は、まだまだ始まったばかりだ。

座右の品
You can’t touch this

人生最大の衝撃!! はじめて“ヒップホップ”というものがボクの中に入ってきた。 タイトルもわからないままCD屋さんへ買いに走った一枚。

【略歴】

1974年10月23日生(34歳) 福岡県直方市出身/東京都中野区在住 直方市立直方西小→直方市立第三中→築豊工業高等学校電気科→会社勤務→上京→アルバイト役者やダンサーとして活動→空調設備会社勤務、役者【血液型】O型【星座】天秤座【家族構成】両親、姉【趣味】ゲーム【好きなタイプ】考え方も身体も柔らかい人 井川遥【嫌いなタイプ】考え方も身体もかたい人【好きな食べ物】カレーライス【嫌いな食べ物】やわらかいごはん【お気に入りスポット】中野ブロードウェイ【座右の銘】生きているだけでまるもうけ

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2008-10-20-MON






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