大澤真一郎: 東京ふつうの人新聞

「インディー・ジョーンズに憧れて、考古学に興味を持った。大学受験は世界史で受けたんだけど、近世以前にしか興味がなくて、そこしかちゃんと勉強しなかったから受験は賭けみたいなものだった」。漆黒の長髪、彫りの深い顔に爛々と輝く目、落ち着いた存在感。辻岡正人監督の「DIVIDE」で主演をつとめトロントリールハート国際映画祭銅賞と審査員特別大賞を受賞し、ニューヨーク・タイムズ「世界で活躍する若手映画俳優100選」に選ばれた大澤真一郎(31)は語る。「サイエンス雑誌ニュートンの古代特集とかよく読んでいた。浪人の時はメソポタミア展とか行っていた。演劇か考古学にしか興味がなくて、その学科がある大学しか受けなかったんだけど、考古は全部落ちて、演劇学科に行った」。(文責:保科時彦)

「10年前の自分に言いたい。簡単にはいかないぞ。でも予想外の出来事もあるぞ」

日本には演劇学科を設置している大学はいくつかあるが、実際に演技指導をする大学と、学問として演劇を研究する大学と大きく違う。大澤さんが入った明治大学の演劇科は後者だ。「そうとは知らなかった」という。「映画が好きだったから映画サークルに入ろうと思ったけど、クラスで一番仲良かった人に誘われてカメラクラブに入った。映画ももともと活動写真と言われていたし、映画・芝居の知識にも関わると思って」。

大澤さんは大学三年までひたすら写真をやっていたそうだ。「プロラボ(プロ専用の現像所)でバイトして、女性誌やストリートスナップ雑誌でカメラマンとかアシスタントの仕事をしていた。仕事が仕事を呼ぶって感じで、このままカメラマンになるんだろうなって思ってた。東京六大学写真展の委員長をやったりしてた」。誰もが憧れるショービズ界にこの時代から足を踏み入れていた。「新人アイドルの写真集を作ったりすることもあった」という。

大学三年の時にクラスメイトに声を掛けられて芝居をすることになり、六大学写真展が終わってからオーディション雑誌で発見した辻岡正人監督主演の「LOST BY DEAD」に応募し、準主演に抜擢され、完全にショービズ界の住人になった。

このようにして振り返ってみるとあまりにもスムーズなサクセスストーリーである。少年時代から目立つタイプの若者が大学で芽を出して誰もが憧れるショービズの世界に入る。スムーズすぎる。しかし大澤さんはこう言う「10年前の自分にこう言いたい。そんなに簡単にはいかないぞ。でも予想外の出来事もあるぞ」。

どういう意味だろうか。

「変わらなかったこと?……それでもやっぱり力が入っちゃうことかな」

実は大澤さんの人生は受験の連続だった。「小中高と全部受験して全部惨敗だった」。第一志望の学校に入ったことがない。「オーディションも『LOST BY DEAD』以降はほぼ全て落ちた」そうだ。「俳優としての実力というより運とタイミングの要素が大きい。ある監督が見上げるような大男の役を欲しているところに、俺がどんな演技をしようが受かりようがない」。人生とは得てしてそんなものかもしれない。運、タイミング、実力、それが一つの「縁」を形成する。

また縁で映画の出演が決まったとしてもそれを活かせるかどうかは本人次第だ。結果的に「LOST BY DEAD」は商業的に成功したものの、自主映画だったため、メインキャストの女優のモチベーションが上がらず、いきなり降板、代役を探すなど、撮影は難航した。それでも大澤さんは自分よりも若い監督 辻岡正人(当時19歳)を信じたし、自分を信じて演じきった。「真冬の山で3日間廃工場で野宿、撮影した。あれ以来どんな現場に行っても辛くない」。

自主映画ながら商業映画に匹敵する成功を納めたこの作品はむしろ稀有な存在であるが、その後の大澤さん、辻岡監督の成功はこの巡ってきた「縁」を信じ活かしきったことにある。「ふつうの人っていうのはいそうでいない。自分はふつうだと思うけど、周りからはふつうじゃないと思われているんだと思うし、それが自分でも分かるからやっぱりふつうじゃないんだなと思う」。

彼の話を聞いてこの言葉の意味がよく分かる。実はチャンスというのはしょっちゅう巡ってきているのだと思う。それに気付いて活かそうと思えるかどうか。あるいはチャンスがなかったらそれを作ろうと思うかどうか。

今は日芸の学生とオムニバス映画『Human’s』(2008年公開予定。主演JAY役)の撮影準備中の大澤さん。その役で使うブラック・デヴィルというあまり見かけない煙草を燻らしながら言う。「8年間のキャリアで変わったことは、力を抜けるようになったこと。昔は現場で共演の人とも世間話ができないくらいだった。喋ると全部抜けちゃうような感じで。変わらなかったこと?……それでもやっぱり力が入っちゃうことかな」。

大澤真一郎。職業、俳優。変わらないまま変化する。

座右の品
おやつ

シニカルで一見シュールな投げっぱなし感とか視点が面白い。なんでもないことを面白く描くのが凄い。

【略歴】

1977年1月8日31歳 東京都杉並区出身 練馬区在住 杉並区立高井戸第二小→同区立西宮中→東海大学付属浦安高校→代々木ゼミナール→明治大学文学部文学科演劇学専攻【星座】山羊座【血液型】O型【家族構成】父母弟弟【趣味】サッカー、写真、映画(劇場が好き。新宿武蔵野館、池袋新文芸座)、散歩【好きな食べ物】カレー、ピザ【嫌いな食べ物】ホワイトアスパラ【お気に入りスポット】井の頭公園(吉祥寺)【尊敬する人】親、祖父母【座右の銘】軽やかなフットワーク【好きなタイプ】品がある人。ある程度の教養がある人【嫌いなタイプ】空気、距離感の読めない人【子どもの頃の夢】パイロット【尊敬する俳優】永瀬正敏、原田芳雄、桃井かおり【もし俳優じゃなかったら何になっていた?】洋服屋【演技の時心掛けていること】相手との距離感(作品自体は虚構だけど、そこに流れている感情は限りなくリアルに近いから)

【映画監督 辻岡正人さんから一言】「大澤さんのヴィジュアル、アイデンティティ、今時珍しいソウルを持っている俳優です。この記事を読んでいる監督さんがいたら是非彼を使ってみてください。必ず作品のいいスパイスになると思います。

【リンク】モズプロジェクト

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2008-01-07-MON






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