劇団ジコマンゾク 北川聡

2007年10月に自身が主宰する劇団ジコマンゾクの立ち上げ公演を行う北川聡さん(30)。髪の毛一本から足の爪の垢まで演劇人だ。上野や高円寺の公園を舞台にゲリラ的に劇をやる劇団で役者は二人。客の満足より役者の満足を優先する。ただし御代は客が自分の満足度に応じて決めるシステムになっている。彼は「劇をやめようと思ったことはない。半身不随になったら考えるけど、声が出せるなら声で表現できる」と言う。他に選択肢はない。職業として役者を選んだという次元ではない。自分即演劇人だったのだ。(文責:保科時彦)

「認められなかろうが一生やると決めたから止めない」

北川さんは自分を演劇人と自認している。それは役者でもあるし、俳優でもある。しかし同時に客でもあり、演出家でもある。およそ演劇と係るものが全て混在しているものが「演劇人」だ。こういった言葉の選び方はかなり本人の意識が表れる。好きな戯曲はサミュエル・ベケット「ゴド−を待ちながら」、エドワード・オールビー「動物園物語」、ハロルド・ピンター「ダムウェイター」、安部公房「友達」など、不条理な世界観、観念的存在としての人間を抉り取るような作品を愛している。

一体彼は何故、演劇人になったのだろうか。実は幼少期の経験がそのことを語ってくれる。「小、中と半分くらいしか行かない不登校児だった。たまたま当時できたのが掛け算で、それだけできればなんとか算数の授業についていけた。それで数学が好きになった」。その当時は劣等感だらけで、とにかく「人並み」になりたかったそうだ。「浪人中に将来について考えた。折角、不登校という素晴らしい経験をした自分に堅気の道を歩かせてしまってはもったいないと思っていた。周防正之監督の『Shall We Dance』を見た帰り道に自転車に乗りながら『俺は俳優だ』と思った」。

もう決めたら梃子でも動かない。迷いはない。「貧乏しようが芽が出なかろうが、『才能ないからやめろ』と言われようが、認められなかろうが一生やると決めたから止めないという覚悟です」。大学は数学専攻に進んだ。「どうせ一生芝居やっていくんだから大学では違うことやって人生勉強しておこう」と考えてのことだった。

「ここにも同じ苦しみがあったと思ってもらえる表現がしたい」

大学卒業してから彼の役者修行が始まる。養成所では怒られまくったようで、自信家だった北川さんは「期待されているから怒られているんだ」と暫く考えていたようだが、やがて「嫌われていただけだった」ということに気付いた。反省したら怒られなくなったという。シェイクスピアの「夏の夜の夢」を全員カエルの役でやらされることになったらしくカエルの研究をする羽目に。やがて役者人生の師匠である界存氏と出会う。氏からはヴォイストレーニングを受けていたが、コンダクトを振る練習やオカマの練習をしたり、多くの芸を仕込まれた。今では「声が武器」になっている。

生活に対する不安は?という問いに「不登校だったから人と会話が出来る段階で満足してるっていうのもあるけど、人より十年遅れた人生を歩む覚悟がある」と答える北川さん。実は今年結婚した。今でもやっている大江戸温泉物語での仕事場で出会った人だったが、割りと初期の段階でお互い結婚するんだろうなと何となく思っていたようだ。3年半の交際の末の結婚だったが、特にきっかけは必要なかったようで、ずっと大江戸温泉物語で式をしたいと思っていたことが今年実現したということだったようだ。

演劇人北川が立ち上げた「劇団ジコマンゾク」はどういうコンセプトで生まれたのだろうか。「演劇っていうのは脚本、役者、客とのトライアングル構成なんだけど、本来一番大きいはずのお客さんを周縁において、剣豪の試合やおじいさん同士の囲碁勝負のように、実は誰も見ていないところで名勝負が生まれているんではないかというコンセプトがまずある。だから役者二人が互角の勝負をしているところをお客さんに覗いてもらう」。

演劇人北川には演劇を通して伝えたいことがあるという。「不登校の経験がそうであるように、自分にしかわからなくて自分にしか表現出来ない苦しみがある。自分だけが苦しんでいるんだっていう人に、ここにも同じ苦しみがあったと思ってもらえる表現がしたい」。

劣等感に苛まれていた少年は、その劣等感に裏付けられた自信を得るに至った。大なる悲観は大なる楽観に一致するというが、彼の言葉を聞いて僕はランボーの詩を思い出す。“また見つけた。何を? 永遠を”

座右の品
椿三十郎

日本の娯楽活劇としてはNo1.ラストのライバルとの対決は映画史に残る。必見!

【略歴】

1976年11月18日生まれ 30歳 東京都昭島市出身 東京都大田区在住 昭島市立東(あずま)小→同市立昭和中→都立昭和高校→浪人→茨城大学理学部数理学科数学専攻→俳優養成専門学校→大江戸温泉物語・役者陣【星座】蠍座【血液型】B型【家族構成】妻【趣味】トイレを快適空間にすること。本棚を置き、足マッサージを設置。トイレオリジナルCDを作った。そのCDは結婚式の引きでものとして配布した【好きな食べ物】とんかつ【嫌いな食べ物】ない【お気に入りスポット】浅草【尊敬する人】樹木希林【好きなタイプ】変な人【嫌いなタイプ】無表情な感じの人【子どもの頃の夢】サラリーマン【アクティヴィティ】日本民話の会に参加「売れない役者生活してると周りにいる人が若い人ばかりになってしまう。上の世代に飛び込みたかった。この会で若いのは自分一人」【言われて嬉しいこと】「あ、ちょっと変わったね」と言われると嬉しい。死ぬまでそう言われ続けたい

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2007-09-10-MON






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