佐々木隆宏 ヴォーカリスト

「この子はとっても優しいの、みんなに優しい。とっても素直なの」。インタビューは市川の佐々木隆宏さん(24)行きつけのお好み焼き屋さんだったが、そこのお母さんは言っていた。ボーカリストとして都内でライブ活動をし、自分でもボイストレーニングを開講している。太く、力強い声でジャズを歌い上げる好青年だが、その中身は女性であり、悩みも多い若者だった。堂々としたたたずまいは自信ではなく、音楽への素直さの現れかもしれない。(文責:渡辺タケシ)

「生まれてこのかた、中身は女性なんです」

9月上旬、曙橋のとあるジャズバーで佐々木さんは歌っていた。現在はジャズを中心にしてボーカル活動をおこなっている。知る人ぞ知る名曲をドラム、ベース、ピアノのトリオに乗せて。歌声が聴いている人の心に入ってくる。音楽に心を預ければ、バンドという車に乗って、佐々木さんの歌が作り出す世界をドライブするような感じだ。楽しかったり、驚いたり、ドライブならあまり悲しい思いはしたくはないが、哀愁に身を委ねたり。ライブの合間には「あたし」の一人称で曲にまつわる話をして場を和ませてくれる。

「生まれてこのかた、中身は女性なんです」と言うように小さい頃から自分の女性的な部分は意識していた。「遊び方なんかが違って、男の子だとボール遊びを好むけど、あたしはままごとだった。女の子の友だちしかいませんでした」。「小学校の時はいじめられました」。いじめられたのは女性的だったからだけではないかもしれない。母親が教育ママで、塾通いの生活はかなりスパルタだった様子。「友だちとテレビの話も出来なかった」と言う。

そのスパルタもあって中学校から私立の学校に通う事になる。男子校だった。「不安はありましたが行くしかなかったです。でも、行ってみたら楽園でした」。学校では女性としての扱いを受けた。自身でも「女性因子がこう扱われるのか」と感じ入った部分があったという。中高一貫の学校で6年間通う事になる。音楽との付き合いが始まったのは中学校に入学してからだった。「音楽をやりたかったのでブラスバンド部に入りました。受験で何もできなかったから」。トロンボーンを担当し6年間在籍する事になる。

女性である部分も意識していると同時に、自分が男性である部分も意識している。高校時代、「このままでいいんだろうか」と思って女性と付き合った事もある。でも、継続的な付き合いにはならなかった。「好きだったけど最後までいけなかった」。そして、ブラスバンド部の親友と付き合うことになる。「人情味が深い人でしっかりしてる人でした。自分がチャランポランなんでバランスが取れてる感じ」。だが、高校の終わりに別れを迎える。その時に「落ちた」、「何がしたいんだろう」と自分に問いかける状況になった。

「お前の仕事は変わりがいないから、這ってでも行け」

「歌いたい」。進学校だったので周りはみんな有名大学への進学の話ばかりだった。負けず嫌いの性格もあってか「なんでみんな本当にやりたいことを隠すの」、と疑問の中で自分に正直に進路を考えていた。また、自分の女性意識から考えると認められる仕事も限られるし、「ボーカルしかない」と、崖っぷちに追いつめられた状況でもあった。

当時、よく聴き、投稿もしていた市川FMのパーソナリティーの人に、歌を歌いたいなら、とプロのジャズ女性ボーカリストを紹介してもらうことになる。レッスンに行き、すぐに受講を決める。ボーカリストとしてのキャリア、ジャズとの付き合いはこの時から始まった。

彼の女性的な部分は音楽にいい影響を持つのではないか。「配慮の仕方、ミュージシャンへのコミュニケーションではまろやかに物事を終わらせられる部分もあります。音楽への影響というのはないかも」。しかし、自分には「ボーカルしかない」と退路を絶った姿勢自体、巷で言うNO LIFE NO MUSICを掲げるミュージシャンと重みが違うかもしれない。

「音楽をしている時は苦しいです。でも、音楽なしでは生きていけない。お客さんが楽しんでくれたり、泣いて、怒って、感情を出してくれればいい」。

どんなに作り込まれたCDよりも、下手糞でも想いを込めて弾いたギターの弦の音の方が心を打つ力はあると思う。ヘッドフォンから演奏のリアリティーが感じられないことがある。ライブでの佐々木さんの歌声は心の叫びと言うよりもリスナーとコミュニケーションをするような歌だった。素直な音楽への気持ちに、聴いている側も自然と心を開いてしまうのかもしれない。

女性的な部分も含めて、その優しさ、素直さは確実に佐々木さんの音楽の交換不能な要素になる。彼の祖父は死ぬ間際にメッセージを残した。「お前の仕事は変わりがいないから、這ってでも行け」。「苦しい」と言うステージ上での姿は伸び伸びと楽しんでいるようにしか見えなかった。

お客さんの心を開く鍵は自分自身、また、周りの人に対する素直さにあるのかもしれない。

座右の品
iPod

これがないと生きていけない。自分のすべてが詰まっている。

【略歴】

1982年10月7日生 24歳 千葉県市川市出身→市川市立大和田小学校→私立市川中学校→同高等学校→玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース→ボーカリスト【星座】天秤座【血液型】O型【家族構成】父・母【趣味】お酒(作るのも、飲むのも)【好きな食べ物】心のこもったもの【嫌いな食べ物】キュウリ【お気に入りスポット】本八幡【尊敬する人】おじいちゃん【座右の銘】一期一会【好きなタイプ】屈託のない笑顔で、自分の芯がある人【嫌いなタイプ】無神経な人【子どもの頃の夢】漫画家、車掌さん

【アーティストブログ】SaSa's Blog Fiesta! http://ameblo.jp/sasa-piro/

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2007-09-10-MON






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